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辺りを見渡すと、藍色の座席、座席、座席・・・ 左には中年のオジサン、右には小さな窓がついていて、硬い金属らしきものでできた羽根と、眼下に広がる雲が見渡せる。 これは・・・ ――知ってるぞ!これは「飛行機」ってやつだ! そう、あの泉から何度も見た。 僕らのようには、飛べない人間どもが、空に恋焦がれて作った機械。 ――でも、なんでなんだ!? 最後に覚えているのは、SHU の叫び声と、水飛沫に水の泡、青っぽい光・・・。 これは夢なのか? 呆然としている僕を、隣のオジサンが 「食べないのか?」 と言わんばかりに一瞥する。 なんとなくつられて、となりのオジサンの見よう見まねで、ボウルにご飯を入れてかき混ぜて口に運んでみる。 「んま~。」 夢でも味がするんだぁ。 妙なことに感心しつつ、思わずぺろりとたいらげてしまった。 となりのオジサンは通りかかる女の人(きっとスッチーってぇやつに違いない)にやたらと熱心に話しかけている。スッチーもにこやかに応対している。しかし、 「また会えませんか?」 「帰りの飛行機ででもお会い出来たらよいですね。」 スッチーは軽ぅくかわすと、華やかに微笑んで去っていった。 ――ぷぷぷ。サービス業だから仕事でやさしくしてるんだってばーねぇぇ。 と、思いかけたとき、足元にある茶色のバッグに気づいた。なんとなくそれを開けてみると、そこには手帳 、パスポート、眼鏡にカツラまで入っている。 ――なんだこりゃ。 パスポートを開くと、「EDWARD KEITH」と書いてあり、ブラウンの髪に緑褐色の目をした男の写真がついている。この夢の中での名前らしい。 その後また眠りに落ちたのか落ちていないのか、 「当機はまもなくロサンゼルス空港に到着いたします。これより着陸態勢に入りますので座席、テーブルを 元の位置にお戻しになりシートベルトをおしめください。」 機内アナウンスの声で我に返った。 エンジン音がひときわ高くなり、高度を下げていく。ついで車輪が地面につくのが伝わってくる。妙にリア ルな感触だなぁ、なんて思いつつ、ぼんやりと窓の外を見ていた。飛行機から降りると、人の群れになんとなくついて行きつつ、入国カウンターもなんとなく通り過ぎたところで、段差につまずいてすっころんでしまった。
顔をあげると、ステンレスの銀色の柱に映った男の顔。 パスポートの写真と同じ顔だ。 恐る恐る両腕を上げてみる。 その男も両腕を上げる。 今度は左右に揺れてみる。 その男も右左に揺れる。 ガ━━(゚Д゚;)━━━ン!!!!!? 男にはもちろん羽根もない。 ――ま、まさか・・・ 僕は不吉な予感いっぱいになりながら、自分の背中に手を伸ばす。 その予感は的中した。 ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン!!! ――なななないっ!! あの麗しき羽根が!! 「うああぁぁぁぁ!!!」 僕は叫びながら男の映った柱に駆け寄った。 柱に映った男は顔をゆがめながらこぶしを振り上げている。 走馬灯のようによみがえる記憶の中で、僕の頭の中で、RYU の台詞がこだました。 「あんま覗きこみ過ぎて、足すべらすなよ。落っこちたら下界行きだぜ?」 ――ゲカイイキダゼ―― 「うそだぁぁぁああ!!!ふんぎゃぁぁぁ!!」 異変を聞きつけた空港警備員がばらばらと集まってくる。 「どうしました?」 「ないッ!ないッ!ここはいったいどこだよ!?」 「いったい何をなくしたんです?」 警備員がたしなめるように話しかけるが かまわず僕は叫ぶ。 「どうやってもどるんだ!どうやって!!僕は違うんだ、この世界の住人なんかじゃないんだ!!戻してく れ!*#$%&!?羽根はどこへやった!」 食いかかる僕に対し、警備員らは一瞬怪訝な顔で顔を見合わせると、一番屈強そうな男が、ずずいと前に出 てきた。 「ちょっと、そこまできてもらおうか」 と腕をつかむ。 どうも頭がおかしい人と勘違いされたらしい。 いや、実際おかしくなってたかもしれないが。 「おいっ、なにする!はなせよ!」 僕はそう叫んで強引に手を振りほどくと、人の流れていく方向に駆け出した。
「はなせー!はなせー!もどせー!もどしてくれー!!」 「おとなしくしろ!」 ジタバタする僕の目の前に、高そうなダークグレーのスーツを着た男が立ち止まった。 「Mr.KEITH ですね?」 応える前に、スーツの男は内ポケットからなにやら ID カードらしきものを警備員にちらりと見せた。 青い文字で、FBI ・・・? 警備員らが虚を衝かれたように動作を止める。 「彼は重要なお客人でね。」 男は落ち着き払った態度でそういうと、僕の手を取り立ち上がらせた。 何事か理解できないでいる警備員をそのままにして、男は僕を連れるとツカツカと表に止めてある車に向か って歩いていく。
「Alen から何か聞いていますか?」 「だから聞くも何も・・・」 男は納得したようにうなずくと、 「では、到着したらお話しますよ。」 それっきり男は何も話さず、僕はどうしたらよいかわからず、ただただ、流れ行く景色に身を任せるしかな かった。 いったい、これからどうなっちゃうんだろ・・・。
つづく。
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