やわらかな陽射しに包まれながら、心地よい風に揺られうたた寝をしていたとき
「また、やってるやってる」
SHU のからかうような声が聞こえてきた。瞳を開けば、 SHU が下界への泉を覗き込んでいる。
「なんだ SHU 、またヤツらの観察?」
僕はゆっくりと身体を起こし、羽根を広げると、二度三度羽ばたかせ、SHU のところへと近づいて行った。
泉は瑠璃色にゆらめき、やわらかな陽の光を反射している。水面を覗きこめば、吸い込まれそうな青の、限りなく透きとおった世界が広がっている。
「あんま覗きこみ過ぎて、足すべらすなよ。落っこちたら下界行きだぜ?」と SHU が声をかける。
「 SHU じゃあるまいし、そんなドジするわけないだろ」
笑いながら軽くかわし、僕は青の世界に目を戻す。
青く光る世界――地球。
「キレイ・・・」
しかしその上では目まぐるしく創造や破壊が、繰り返し繰り返し行われている。この泉からはそんな下界の様子を観察することができる。
これが結構おもしろいんだ。見ている分には。特に人間どもは。いちいちくだらないことで泣いたり笑ったり。
しかしバカだと思う。自分らが一番えらいと思ってるし、食べるわけでもないのに、同じ種でころしあいをする。
まぁそれで生態系がちょうどよく保たれているのかもしれない。うまくできているよな。なにはともあれ「"人間"にだけは生まれなくてよかったよ。」
僕はそうつぶやきながら顔を上げ、泉を背にして我らが光の園を仰いだ。
僕らはこの美しき光の園で、地球時間で言う何千、何万という時間を、ゆったりとした流れで過ごしている。調和を保ち、人間どものようにアホくさい争いもしない。
高度な知性に、麗しき美貌、そしてどこにでも飛んでいける純白の羽根を持ち、琴をかき鳴らせばその上品な音色に皆の者がうっとり。
そう。まさに我らこそはサイコーの神の創造物ではないか!欠陥品の人間などとはデキが違うのだっ!
「わははわははわはははは!!!!!」
と腰に手を当て高らかに笑ってみちゃったりしたその瞬間、
「おいっ!なにのけぞってんだよ!あっ!!」
SHU の鋭い声で我に返ったときは時すでに遅し。
ずるっ
――えっ?「ずる」?
ドボシャーン!!
なんとっ、足を滑らせ泉に落ちてしまったのだ!
「@*#%$%&!!!」ブクブクブク。。。
もがくのもむなしく、こうして僕は、あっという間に深い深い藍に吸い込まれて行ってしまったのである。